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リウマチ様関節炎の原因、症状、治療法

2019.07.09

リウマチ様関節炎のまとめ

リウマチ様関節炎とは、複数の関節に細菌やウイルスなどの病原体の感染を伴わない炎症を生じ、関節をつくる軟骨の表面を障害する(糜爛(びらん)と呼びます)病気をいいます。加齢とともに進行する関節炎も様々な関節に生じますが、この場合、糜爛は起きません。

リウマチ様関節炎は、自分の免疫が自分の体に過剰に反応して炎症が起きる病気です。こういった病気は自己免疫疾患と呼ばれ、リウマチ様関節炎もこの中に含まれます。犬でも猫でもなる病気ですが、犬の方が多くみられます。どのような品種でも起こりえる病気で、発症する年齢も若齢から高齢まで様々です。また関節の軟骨表面に糜爛が出ないタイプもあり、その場合には免疫介在性関節炎と呼ばれます。

足を庇う、動きたがらない、立ち方や手足の向きが変わった、といったものから、元気食欲がない、熱があるといった手足とは別の症状も示すことがあります。
診断にはいろいろな検査を行います。飼い主様からの話も経過や様子を知るうえで大事な診断材料になります。病院では触診やレントゲン検査、血液検査と、関節の中にたまっているドロッとした液体(関節液)を調べて判断します。

リウマチ様関節炎は完治させることが困難な場合が多く、ほとんどの場合、生涯、薬で管理していくことになります。ステロイド剤や免疫抑制剤と呼ばれる薬を使って維持していきます。また、手首や腫の関節の変形で生活が困難な場合は装具を作成して使用することもあります。

リウマチ様関節炎とは

 

皆さま、”リウマチ”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
もしかすると身近に治療を受けている人がいる、という場合もあるかもしれません。”リウマチ様関節炎”はヒトのリウマチ関節炎に似ている病気です。ではどういった病気なのでしょうか。

 

リウマチ様関節炎という名前の通り、関節に炎症を起こす病気になりますが、高齢になるにつれて進行する一般的な関節炎とは異なります。簡単にお伝えすると、複数の関節に生じる関節炎のうち、細菌の感染がなく、関節にびらんを生じるものがリウマチ様関節炎に分類されます。専門的な話にはなりますが、基準も設けられています。その基準とは、人の基準をもとに作成された下記の項目のうち、必須項目(☆)の2項目を含む計7項目以上を満たすもの”というものです。

 

・休息後の運動時の関節のこわばり
・1つ以上の関節における運動時の疼痛や圧痛(圧したときの痛みや違和感)
・1つ以上の関節における腫れ
・3か月以内に2か所以上の関節が腫れている
・左右同部位の関節の腫れ
・皮下結節(いわゆる出来物)(犬では稀)
・(☆)骨破壊などのリウマチ様関節炎を示唆するレントゲン画像
・関節液の性状の異常
・(☆)滑膜(関節を包む関節包という袋の内張)の特徴的所見 ※1
・(☆)血液中のリウマチ因子の検出
・皮下結節の特徴的変化

※1 滑膜絨毛の増生、滑膜表層細胞の増殖、リンパ球・形質細胞(ともに免疫に関係する細胞)を主体とした慢性炎症性細胞の出現、滑膜浸潤細胞の濾胞(多数の細胞からなる袋状の構造物)形成、細胞の巣状壊死、滑膜表層または間質へのフィブリン(血液の凝固にかかわる蛋白の一種)沈着

 

ただし、病気の初期では関節の鹿関などが確認できないなど、診察の時点では上記の基準を満たしていない場合もあります。だからといってリウマチ様関節炎を完全に否定しきることは難しく、逆に、似たような所見でもリウマチ様関節炎とは別の病気が隠れている可能性もあるということは考慮に入れなくてはなりません。

 

リウマチ様関節炎の原因

 

最近流行の『腸活』でも出てくる免疫の仕組みを簡単にご説明します。体のおよそ7割の免疫細胞が腸にいると言われていますが、そもそも免疫細胞とはなんなのでしょうか。私たちの体は、常に外界の細菌やウィルスが体内に入ってこないかどうか免疫細胞が見張ってくれています。この免疫細胞には、大きく分けて2種類います。

 

1つが自然免疫といって、体内に侵入したウィルス(自分ではない異物)などに対して攻撃してくれる 『NK細胞』(ナチュラルキラー細胞と言って免疫の特攻隊のようなイメージ)や、異物の進入をいち早くキャッチし、リンパ球に情報を伝える『樹状細胞』(免疫の総監督)、血液成分の1つで、異物を見つけたら食べてくれる『好中球』などがあります。

 

もう1つは、獲得免疫といって異物に強力な攻撃をしてくれる『リンパ球』です。このリンパ球は、記憶力がとてもよく、一度入ってきた異物を覚えているため、次に体内に進入してきた場合にすぐに対応してくれます。リンパ球から作られる『抗体』などがこれに当たります。私たち人間の体も犬も猫もこの『免疫細胞』が常に正常に働いていることで、風邪にかかりにくく、またかかったとしても撃退してくれます。

 

では、自己免疫疾患と言われるリウマチ様関節炎はどのようにして起こるのでしょうか。自己免疫疾患とは、体を守るように訓練されてきたはずの免疫細胞が『暴走』してしまい、本来攻撃する必要のない『自分の細胞』にまで攻撃してしまう病気です。

 

リウマチ様関節炎では変性したIgG、IgMと呼ばれる抗体に対して反応を起こし、免疫複合体と呼ばれるものが形成されます。その免疫複合体が関節滑膜に沈着することで、関節に炎症を起こし、結果として上記に記載した項目にあるような異常を生じることになります。

 

リウマチ様関節炎を発症しやすい動物種、品種、年齢

 

リウマチ様関節炎はネコよりもイヌのほうが多く見られます。特にミニチュアダックスフント、シェットランド・シープドッグなどの犬種や、トイ・プードルなどのトイ種と呼ばれる日本で人気の小型犬で の発症が多いとされています。若齢から老齢にかけてあらゆる年齢層で発症が認められる病気ではありますが、若齢での発症は少なく、主に5歳齢以降で多く見られます。

 

リウマチ様関節炎の症状

 

関節炎という病名からも想像がつくと思いますが、主な症状の1つは関節の痛みです。複数の関節に生じる病気ではありますが、1か所の関節のみで発症することもあるため、跛行(あしを引きずる、庇うこと)や、足を挙げるという症状から、全体的に動きが鈍い、動きたがらない、キャンとなくなど様々です。足自体の症状は寝起きなどの動き始めに強く出ることがよくあります。

 

他にも、体のあらゆる場所で炎症を起こすと、発熱、倦怠感(だるさ)、食欲不振など、歩き方とは別の症状を示すことも珍しくありません。

 

症状は遠位(体幹から遠い場所)の関節で重度になる傾向があります。症状が進行してくると、様々な関節が腫れてきたり、関節構造が破壊されることにより手足の向きが変わってしまったり、手首の関節や運が下がって地面についてしまい、いわゆる『ベタ足』になってしまうこともあります。

 

リウマチ様関節炎の予防法

 

残念ながらリウマチ様関節炎は、人と同じ様に完全に予防する方法はありません。症状を悪化させないためには、早期の診断と治療が重要になってきます。最近の人のリウマチ様関節炎での発症の素因にタバコの喫煙が関わっているなどとの報告がありますが、正確な原因はわかっていないのが現状です。

リウマチ様関節炎の診断方法

 

リウマチ様関節炎は1つの検査だけではなく、様々な検査結果を複合して診断します。

 

・問診、視診、触診

ここでは飼い主からの情報(経過やどういった症状に困っているかなど)や、一般的な身体検査に加え、関節の痛みや腫れ、立ち方や歩き方の異常を確認します。体温はイヌ・ネコの場合、人よりも平熱が1~2°C高く、また病院に来ることで緊張や興奮により39°C代前半まで上がることも珍しくはありません。そのため院内での評価だけでなく、自宅で撫でたり抱っこした際にいつもより体が熱いと感じることがないか、という飼い主の印象も重要となります。

 

・レントゲン検査

関節周囲軟部組織(骨ではない軟性の部位の腫れや関節液の貯留、関節の骨崩壊像(関節辺縁の不整、X線透過性の減弱より白く写るということです)などを確認します。

 

血液検査

血液の検査では炎症により白血球の上昇や、犬ではC反応性タンパク(G-CRP)と呼ばれる急性炎症を示す値が顕著に上昇することが多くみられます。猫では血清アミロイドACSAA)という値が炎症の評価に使われることがあります。その他、犬では外部の検査センターに依頼することでリウマチ因子、抗核抗体と呼ばれる自己免疫疾患を検出するための検査も実施します。

 

リウマチ因子は罹患した犬の20~70%で陽性と言われています。この検査が陽性だから必ずリウマチである、もしくは陰性だからリウマチではないと言い切ることはできません。抗核抗体はリウマチで陽性となることは多くありませんが、この検査が陽性の場合、自己免疫性に肝臓、腎臓など複数の臓器に疾患を引き起こす全身性エリテマトーデスと呼ばれる病気が隠れている可能性も考えられるため、関節以外にも異常がないか注意が必要です。

 

・関節液検査

関節液とは関節内にある粘稠度の高い液体です。正常な状態では色はほぼ透明で糸を引くような硬さの液体です。この液をガラスへ薄く引き伸ばし、染色液で染めて顕微鏡で確認します。普段はこの液体の中に細胞の成分はほとんどいません。一方、リウマチ様関節炎では色調は濁り、粘稠度は下がってほとんど糸は引かないサラサラの液体になります。顕微鏡では炎症細胞、特に好中球と呼ばれる白血球の一種が出現します。好中球は普段は細菌と戦う役目を担っており、成功でも出現することがあるため、成染の疑いがある場合は関節液に菌がいないか調べることもあります。

 

これらの検査から総合的に、リウマチ様関節炎なのか、他の疾患なのかを診断していくことになります。

 

リウマチ様関節炎の治療法

 

治療は主に内科療法になります。つまり飲み薬です。リウマチ様関節炎では、本来働かなくてもよいものに対して免疫機構が働いてしまうという事象が背景にあります。勘のいい方ならばお気づきかもしれませんが、その免疫反応を抑えてしまうというのが、治療には重要となります。

 

その作用をもつ薬の1つがステロイド剤(プレドニゾン、プレドニゾロンという薬が多く使われています)です。ステロイド剤には消炎作用と免疫抑制作用があり、個体差はあるものの、多くの場合症状を改善させることが可能です。ステロイド剤と聞くと、それだけで怖い薬と感じ、使用することに対して一歩引いてしまう人も少なくないのではないでしょうか。確かにステロイド剤には副作用もいろいろありますが、しっかりと使用する量を調整し、上手に使用することが重要となります。

 

またステロイド剤を減らしたいときや、ステロイド剤だけでは治療が困難な場合では免疫抑制剤という薬を一緒に使用することもあります。これはその名の通り、免疫力を抑える薬です。シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルなど様々な薬がありますが、これらの薬をステロイド剤と共に使用して長期的に症状をコントロールしていくことになります。併用することでステロイドの投与量が少なくすることが可能である場合があります。場合によっては一度症状が改善したのちに(寛解)薬を徐々に減らし、やめることができる場合もありますが、多くの場合、炎症が再燃してしまうため、継続して使用する必要があります。

 

また治療とは少し違いますが、症状が重度で、手首、足首の関節がペタッと下がってしまい、それによって上手く歩けなくなってしまった場合や、本来地面に当たらない部位が地面に接触することで皮膚に炎症や擦過傷を生じてしまう場合、生活の質(quality of life: QOL)の向上を目指して装具を使用する場合もあります。装具は実際に装具士に採寸や型取りを行ってもらい、オーダーメイドでそれぞれの動物にあわせて作成していきます。

 

 

リウマチ様関節炎は不可逆的な病気です。進行したものを元に戻すことはできません。一早く動物の変化に気付き、早期に適切な治療を行うことで症状や進行を可能な限り抑えることが重要になってきます。少しでも長く元気に走り回る姿を見ていたいというのは皆さま一緒だと思います。そのためにも、変だな、と感じたらしばらく様子を見るのではなく、まずは動物病院で相談してみてください。

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